らしさを活かした傑作
2022年の実車発表後、続々と多くのメーカーからミニカーが登場している現行シビック TYPE R。
TYPE Rという系譜から考えても、もはやミニカー展開が保証された車種ではあるが、エアロをまとったカスタムモデルとなると、歴代に比べてまだまだ少ない。そんな中でこの状況に一石を投じたモデルが、アメリカンミニカーの老舗ホットウィール(以下HW)からデビューした。
先月に高価格帯プレミアムの人気シリーズ、ブールバードで登場したHW流FL5は、極めてアグレッシブ。
再現されたのはアメリカのサンダーヒルズ25時間レースに参戦したTeam SPOON仕様で、ベースから既に一線を画している。
低く、どっしり構えたサイドスタイルは攻めの姿勢ともとれる表現。さらにホイールベースも長く、オーバーハングも切り詰められている。
ノーマル基調のトミカと比較すると、ピラーやホイールベースなど顕著な違いが複数現れ、作り込みの違いがより明らかになる。
それぞれを一言で表すのであれば、トミカは「ふっくら」、HWは「しゃっきり」と言ったところだろうか。
大型リアスポイラーや2本出しマフラーなど、レーシングイメージがとことん詰まったリアスタイルは、細部表現も相まって一瞬HWであることを忘れてしまうような完成度の高さだ。
ここからは細部表現に迫っていく。
フロントではスポイラー一体のロアグリルがシャシ一体、ブルーカラーやアッパーグリル、ロゴ類などはタンポでの表現となっている。
この複雑な塗り分けをタンポで表現する技法や、US仕様と一目でわかるサイドマーカーを備えているところは、まさしくHWらしいポイントと言える。
ホイールはモチーフ車と似たデザインの5本スポークタイプを採用。ブラックカラーでエアロとの相性も抜群だ。
さらにサイドではスプーンのロゴやゼッケン、リジカラロゴをタンポで表現。
特に後者はカタカナを交えたロゴであるため、親近感を感じられるものとなっている。
リアではスポイラーが別パーツ、ディフューザーやエキゾーストフィニッシャーはシャシ一体、テールランプやプレート、スプーンUSAのURLなどがタンポで表現となっている。
無理に一体成型するのではなく、各所で分けることにより、メリハリのあるスタイルを実現している。
トミカをはじめとする多くのミニカーメーカーのような市販車モチーフでの展開ではなく、レーシングカーモチーフでの展開。
HWが展開する現行シビックRは、カッコ良さを追い求めるという同社のらしさを活かしつつ、プレミアムというシリーズの立場を活かしてリアリティの限界を追い求めた、まさに傑作と言える1台だろう。